2016年プロ野球開幕投手分析【パリーグ編】

2016年プロ野球開幕投手分析【パリーグ編】

2016年3月25日(金)待ちに待ったプロ野球のシーズンが開幕した。開幕試合の楽しみの一つとして、開幕投手の仕上がり具合が挙げられる。そこで開幕投手の投球内容を詳細に分析してみた。開幕投手を分析することで見えてくるものとは…?今回はパリーグ編を紹介する。


いよいよ2016年のプロ野球が開幕。桜の咲く季節に球音が戻り、野球好きにはたまらない高揚するシーズンが到来している。

圧倒的な戦力を揃えてV3を狙うソフトバンクがもっぱらの優勝候補に挙げられるパリーグでは、意外な開幕スタートになった模様だ(3月26日終了時点)。ソフトバンクは昨年最下位の楽天に四苦八苦で1敗1分。一方、梨田監督を新指揮官に迎えた楽天は開幕戦を3点差からの逆転勝利で飾り、2戦目は終盤2点差を追いついて引分けに持ち込むなど健闘を見せる。オリックスはエースの金子で勝てず、2戦目は5点差をひっくりかえされる衝撃の敗戦。そのオリックスを本拠地に迎え撃った西武は、開幕戦は逆転サヨナラ勝利、2戦目は中盤の大反攻で4番・中村剛也のV打で大逆転を果たした。各地で早くも悲喜こもごものドラマが生まれている。

記録から見えてくるパリーグ開幕投手の投球内容

さて、本稿はそんなプロ野球開幕を開幕投手として任されたパリーグ6投手の投球内容を、記録やデータの視点で分析するという趣旨。さっそく話を進めよう。まずはこちらの成績表をご確認頂きたい。

先発投手のゲームメイクを見る6回以上3自責点以内のクオリティスタートを達成したのは、セリーグ開幕投手と同数の5人を数えた。しかし、7回以上2自責点以内のハイクオリティスタートでは、セリーグ4人に対し、パリーグでは大谷と涌井の2人のみ。各先発が総じて奮闘したセ開幕戦と比べると、パ開幕戦では開幕投手が苦労するシーンも多かったようだ。

攝津、則本、金子は与四死球が多く、制球に苦しんだ部分があったようだ。特に精密機械のような制球力を持つ金子の1試合7四球は信じられない。自己ワースト記録だという。四球の影響で球数がかさみ、15球が目安になる1イニング平均球数で攝津、金子は共に20球を超えていた。

こういった成績表に目を通す時、目安の1つに置いているのは、被安打の数だ。許した安打が投球回より多いのか少ないのかをチェックする。少なければ球威があったと言えるだろうし、多ければ不本意な投球を余儀なくされたという見方だ。楽天打線にKOされた攝津は3回7安打と本来の姿ではなかったことが数字上からも確認できるし、6回7安打の菊池も苦しみながらも要所を締めて2失点にまとめたと言えそうだ。

投手有利のカウントを作ることの大切さ

次にストライク率、カウント構築の視点からチェックしてみよう。ストライク率は66%が基準とされ、ストライク2ボール1の比率が理想とされている。則本、菊池、涌井が合格点だ。則本は序盤2回まで四球を連発して苦しみストライク率59.2%だったが、味方逆転直後の3回以降のストライク率は73.9%、完全に立ち直りマウンドを支配したため、トータルでは67.8%になる。

3球目はカウント構築の分岐点にあたり、投手が自身有利な状況を作るためにも3球目の行方は重要なのだ。

菊池の値が素晴らしすぎる。4球目以降に決着がついた打者14人中、13人を3球目までに追い込むことに成功、12打数2安打と打者を圧倒した。一方、3球目以内に決着のついた対戦では13打数5安打と分が悪かった。菊池の例を見るだけでも、早めに追い込むことの重要性が分かるかと思う。一方、金子。精彩を欠いた投球はこの数字にも表れている。

1球1球を分析すれば、投手のタイプや特徴が見えてくる

次に、こちらの表を御参照頂きたい。6投手の1球1球を下記の8結果に分類、その割合を100%の棒グラフで表した。

・フライ・ライナー凡打(犠飛含む)
・ゴロ凡打(犠打含む)
・空振り(空三振含む)
・見逃しストライク(見三振含む)
・ストライク寄与ファウル
・2ストライク以降ファウル
・ボールカウント(四死球含む)
・安打・失策出塁

このようにして6投手の成績を横断的に眺めてみると、色々なことが浮かび上がってくる。下記で得られた情報を投手別にまとめてみよう。

【ソフトバンク】攝津正は投げた球数の半数以上は不利益な結果に

3回は打球直撃で1回持たず負傷降板した2014年8月15日オリックス戦以来の短さになった。5四球に投球回の倍以上の被安打。55.0%という低いストライク率からも、「何もできなかった」という攝津のもどかしさが伝わってくる。80球の55.0%に当たる44球が、ボールや安打・失策など不利益な結果に。この55.0%は6投手の中でワースト。また、空振りはわずか2球。力を欠いた球が多かったことが確認できる。

【楽天】則本昂大の11奪三振、空振り20球は両リーグ開幕投手で最多

11奪三振、空振り20球は両リーグ開幕投手で最多。カウント構築も素晴らしく、3球目2ストライク率はリーグ3位の61.1%を記録した。奪三振10個は3球目に追い込む形を作った後に獲得。3回以降の毎回複数三振の奪三振ショーは、投手有利の状況から生まれた結果と言える。1イニング平均16.9球は多めだ。これは四球を多く出すなど序盤2回まで49球と球数を費やしたことによる影響。

【オリックス】金子千尋の苦しみながらもQS達成は数字にも表れている

7四球は自己ワースト。7回途中137球は明らかな球数過多だ。ボール先行2-0にするケースが5度と多く、3球目2ストライク率はリーグワースト45.5%。3球目で追い込めなかった打者12人との対戦は1二塁打2三振6四球と精彩を欠いた。137球の48.2%の投球がボールや安打・失策など不利な結果に。しかし、被安打は投球回を下回り、空振りも17球で記録するなど、球自体のキレはあったと思う。失点も四球が絡んだだけに制球難が災いした。

【西武】菊池雄星のストライク率70.0%は最多

「この緊張感がある中で、6回2失点。めちゃくちゃ合格点」と塩崎投手コーチが評したように、2点は先制されたが、初の開幕投手の大舞台でこの結果は素晴らしい。追い込んでからファウルを同最多15本打たれて粘られるなどタフな場面もあったが、そういった局面で集中力を切らさなかったのが、逆転サヨナラ勝利につながったはずだ。ストライク率、カウント構築も素晴らしく、無駄なフォアボールを出さなかった点も評価できる。

【日本ハム】大谷翔平は2回以降で本領発揮も、立ち上がりの難しさに泣いた

初回に3失点したが、2回以降7回まではロッテ打線を散発2安打に封じ、本来の力量を見せている。全体の投球に占める、見逃しストライク+空振り+ストライク寄与ファウルといった投手有利の割合が44.1%とリーグ最多を占めた。凡打もゴロ凡打が多かった。7回を投げたロッテの涌井の前に味方打線が散発4安打に封じられ、打線の援護に恵まれなかった点と、立ち上がりの難しさに泣くかたちになった。

【ロッテ】涌井秀章は最も安全なかたちでストライクを取ることに成功した

豊富な経験をもとに質の高いピッチングをみせたのが、通算109勝右腕だ。空振りはさほど多くはないが、注目すべきは103球の21.4%で記録した見逃しストライクの割合。これは6投手中で最多。老獪な投球で日本ハム打線に狙い球を絞らせず、悠々と安全な形でストライクを取ることができた。打球管理も素晴らしく、ヒットになる潜在的リスクを秘めるフライ・ライナー凡打はわずかに3本。一方、ゴロ凡打が11本と多いのも特徴だ。

データで野球を観る楽しさ

6投手の投球内容を記録上からまとめてみた。主観に引っ張られがちになる実際の印象を修正したり、裏付けたりしてくれる手助けになるのが、記録やデータだと思う。野球は数あるスポーツの中でも、数字との親和性がとても良いスポーツ。ネット隆盛のこの時代、調べようと思えば簡単に入手できるデータも多くなってきた。今シーズン、皆さんもスコアブックやメモ帳を片手に野球を楽しんでみてはどうだろうか。

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