2016年プロ野球開幕投手分析【セリーグ編】

2016年プロ野球開幕投手分析【セリーグ編】

待ちに待ったプロ野球が先週金曜日に開幕した。セリーグ開幕戦3試合の結果は、3戦ともロースコアのゲームになった。各投手の開幕への素晴らしい調整ぶりがうかがえる内容だ。今回、セリーグの開幕投手6名をデータの視点から分析してみた。開幕投手を分析することで見えてくるものとは…?


待ちに待ったプロ野球が先週金曜日に開幕した。セリーグ開幕戦3試合の結果は、巨人3-1ヤクルト、中日5-2阪神、広島1-2DeNA。中日vs阪神戦も終盤に中日が突き放す形にはなったが、中盤までは競ったゲーム展開。3戦ともロースコアのゲームになった。

「野球は投手力」とは古今問わずよく使われてきた格言である。セリーグ開幕戦はまさにそのフレーズどおり、最後まで目が離せない僅差の試合運びになった。その背景には、開幕投手の奮闘があった。

多くの開幕投手が先発投手の最大責務を遂行した

本稿ではセリーグ開幕投手6人の投球内容を、従来記録や珍しいデータで眺めてみるという趣旨になる。さっそく以下の成績表をご覧頂きたい。

野球好きにはおなじみ、各種速報サイト等のボックススコアで見かける投手成績表だ。

先発投手の最大任務は試合を作ること。味方勝利の可能性を作り、長いイニングを消化することが求められている。クオリティスタートという指標がある。6回以上3自責点以内のときに記録される先発投手のゲームメイクを診るスタッツで、メッセンジャーを除く5人が記録した。さらにその上の7回以上2自責点以内のハイクオリティスタートも、菅野、大野、ジョンソン、井納の4人が達成。中でも相手に1点も与えなかった菅野、井納はファンの溜飲を下げる好投だったと言えそうだ。

省エネ投球はDeNA井納。ヤクルト小川6回降板はもったいなかった?

球数に注目しよう。井納は7回91球の省エネ投球。15球が目安になる1イニング当たりの球数は11.4球と少なかった。多くの四球を出したメッセンジャーが1イニング平均19.2球を要したのと比べれば、実に効率良く試合を作った。小川も6回85球、1イニング14.2球と上々。1点を追った終盤7回表の2死で打席がまわり代打を送られたが、直後の回に登板した二番手・秋吉が精彩を欠き、決定的な2点を失ったことを考えると、結果論と分かってはいても、100球未満の小川を7回も続投させるべきだった。そう考えるファンがいてもおかしくないだろう。

井納と同じく7回無失点で高橋由伸新監督にウイニングボールをもたらした菅野は、同17.0球とやや球数がかさむ形に。これは下記のグラフで紹介するが、追い込んでから相手打者に粘りのファウルを打たれるケースが多かったことも影響している。その数は15本を数えた。ほぼ同じ球数を投げた大野の倍で、同じ7回無失点の井納のわずか3本とは、対照的な結果になっている。

好投のカギはストライク先行。3球目に追い込むことの大切さ

次にストライク率、カウント構築の視点から確認してみよう。ストライク2ボール1の比率が理想とされるストライク率もさることながら、3球目2ストライク率にも注目する。4球目以降に決着がついた打者を対象に、その3球目で追い込むことができたかをみる。一般に追い込む前と追い込んだ後では打者の打率は7分ほど下がる。ストライク先行で打者を早い球数で追い込むことこそが、好投のカギなのだ。

まずストライク率を見ると、菅野、小川は合格ライン。メッセンジャー、大野は物足りない結果になった。8回途中まで投げた大野は打者29人中8人に3ボール以上にしてしまったが、その中で四球は2個に抑えた。ボール球が多かったが、無駄なフォアボールを出さないという粘投の意識で投げていたのでは?と推測できる。

次に3球目だ。64.7%を記録した菅野の値は素晴らしい。対戦打者27人中、4球目以降に決着がついたのが17人。そのうち11人を3球目までに追い込み、8個のアウトを積み重ねた。強い気持ちが打者に向かっていく姿勢となり、菅野有利のカウント状況で打者と対峙できた場面が多く、このことも最終的な白星につながった要因だろう。一方、メッセンジャーは47.7%と物足りない数字に。2-0とボールを2つ揃えてしまうバッドカウントが7度と多かった。四球6個のうち、押し出しを含む5個は2-0経由でのカウントから出しており、リズムを作ることが難しかったと推測できる。

投手のピッチングを打席結果ではなく1球ごとの結果で見る

今度は開幕投手の成績を相手打者の打席結果で診るのではなく、1球ずつ分解して眺めてみたい。投球結果を下記の8結果に分類し、その割合を100%の棒グラフで表したものが下記表になる。

・フライ・ライナー凡打(犠飛含む)
・ゴロ凡打(犠打含む)
・空振り(空三振含む)
・見逃しストライク(見三振含む)
・ストライク寄与ファウル
・2ストライク以降ファウル
・ボールカウント(四死球含む)
・安打・失策出塁

【巨人】菅野智之はストライク先行の組み立てが高いレベルで実現できた

追い込んでからファウルで粘られた球数が全体の12.6%を占めた。これは6投手中で最多の割合だった。中でもヤクルト坂口には合計7球、山田にも合計3球ファウルで粘られた。そんなタフなシーンも目立ったが、根負けしなかったのは多くの場面でストライク先行の組み立てが実現できたからだ。スコアリングポジションに走者を背負っての打者6人との対戦でも、そのうち4人をしっかり追い込み、主導権を握った状態で打ち取ったのが印象的だ。

【ヤクルト】小川泰弘は6回1失点も、本塁打リスクのあるフライアウトが多かった

ジョンソンとは逆にフライ・ライナー凡打が多い。元々ゴロを打たせるタイプではなく、ここ2年のゴロ率はリーグ平均を下回る42.2%、43.8%。開幕戦はさらに低く33.3%だった。6回2安打1失点という素晴らしい結果だが、一発長打が出やすい東京ドームという環境を考えれば、長野に先制ソロ弾を浴びたように潜在的な被弾リスクを抱えており、打球管理を考えた投球をすべきだったかも。アウト18個の内訳は三振2、ゴロ6、フライ10だった。

【阪神】どうした?メッセンンジャー。投げた球数の約半分が不利な結果に

6四球、62.5%という低いストライク率からもその苦しさは確認できるが、球数の半数に迫る46.9%が実にボールや安打、失策という不利益な結果になったことに驚かされる。上のグラフが示すように特に安打・失策の割合が多い。味方の拙守にも足を取られ2個の失策もあった。ストライクは甘く、はっきりしたボールが多かったのだろう。3球目で追い込み、投手有利の状況を作った打者9人との対戦でも、8打数4安打、2三振、1四球と不調だった。

【中日】大野雄大は低いストライク率だったが、四球を2個に抑えて粘投

昨年は66.2%のストライク率で3年連続二ケタ勝利を達成した大野だが、開幕戦では60.3%にとどまった。初球に限っても6投手中ワーストの60.3%。コントロールを乱したことで、なかなかリズムを作ることができない苦しいマウンドになったが、8回途中を2失点にまとめたと言えそうだ。2点を失ったが適時打を許したのは1本のみ。「格好つけずに泥臭くひとつのアウトを取っていこうと思った」という降板後のコメントに執念を見る。

【広島】ジョンソンはゴロアウトのスタイルを貫徹できた

ジョンソンと言えば、193cmの長身から打者の手元で動く球を投げ込みゴロ凡打の山を築くのを持ち味にする。開幕戦でも本領発揮をみせており、フライ・ライナー凡打が少なく、ゴロ凡打の割合が多い。8回3安打2失点ながらも援護に恵まれず敗戦投手になったが、2本の併殺打を含む12本のゴロ凡打、4.2回分のアウトをゴロで奪うことに成功。DeNA柴田に浴びた2点適時打もゴロ安打だった。自身の投球を十分にできたマウンドと言えそうだ。

【DeNA】井納翔一は燃費の良い省エネでチームに勝利を運んだ

両リーグ開幕投手の中で最も省エネ投球になった。1イニング当たり球数は11.4球と驚くほどの少なさ。打者25人中3球目以内の決着は14人と多く、その結果は14打数1内野安打1三振と理想の内容。早いカウントから打たせて取る投球術を徹底し、ジョンソンとのロースコアの投手戦を制した。全体に占める見逃しストライクの割合が6投手中22.0%と最多だったのも特徴的。広島打線は最後まで狙い球を絞ることができなかったと推測できる。

データを知れば、野球観戦はもっと面白くなる

以上、駆け足になったが、データからセリーグ開幕投手6人の投球を診断してみた。野球は選手の成績やデータを少し調べるだけで、より一層その面白さを増すスポーツである。今シーズンは皆さんもぜひ贔屓のチーム、応援している選手の成績、一打一投をチェックしながら観戦してみてはどうだろう? そこには新たな発見が待っているはずだ。

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